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セラフィン・アルバレス、ローレンス・レック、ザ・チャイニーズ・ルーム

オープニングレセプション: 2017年7月9日(日) 17:00 - 20:00
キュレーション: アサクサ、フェデリカ・ブッチ
協力:HIGURE 15-17 cas, ACTIVE GAMING MEDIA

10 JUL - 07 AUG 2017

アサクサは、セラフィン・アルバレス、ローレンス・レック、ゲーム開発スタジオ ザ・チャイニーズ・ルームによるグループ展『スリードリフト』を開催いたします。紹介する三つのインタラクティヴ作品は、ビデオゲームソフトウェアによって実現され、コンピュータ上の仮想空間を社会的、政治的、倫理的批判の舞台とすることで、スペキュラティヴ(思索的)な建築風景の物語を可能にしています。

メディア理論家マッケンジー・ウォークは、著書《ユートピア・リアリズム》(2014年) のなかで、ゲーム空間は「新自由主義的な主体が行き着くアトピア(場違いな領域)」であると言っています。ゲームがユートピアやアトピアとしての役割り担うということは、現前する世界がそれほど真実に感じられない状況を示唆しています。すでに現実味を失った世界において、ゲーム空間があまりにも現実的に立ち現れるとき、その仮想領域が既存のシステムへの批判となるとウォークは主張してます。混迷する時代を偽装するだけでなく、現実に影響を与えるゲーム空間は、架空と現実の認識にフィードバックの連鎖を作り出しているといえるでしょう。ウィンドウズOSのエラーメッセージを表すブルー・スクリーンは、この危機に対する警告を表しています。

セラフィン・アルバレスによるリーサーチベースの制作活動は、人々の通過点となる建築、とくに空港や回廊などの調査を通じて、未知の旅への洞察を行っています。《迷宮通路》(2014年) は、SF映画に現れる近未来の通路を集めた独自のアーカイヴ「ケーススタディ:SF回廊」(2013年〜)」から抽出し、3Dにより再現した仮想迷路です。映画の象徴的なクライマックスシーンの舞台となる回廊に着目し、その一見見過ごされがちな建築要素を再現します。本作を通じたインタラクティヴな操作が、SF映画の回廊シーンに現れるさまざまなシナリオを想起させながら、終わらないパロディー・サスペンスを生み出しています。

ローレンス・レックの《架空の財産(ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツはあなたのもの)》(2015年) は、ロンドンの保守的な文化施設 ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(王立美術学院) が、中国人の大富豪の手に渡る架空の物語をもとにしています。
この大邸宅の新しい主人にむけられた一人称視点の物件ツアーは、上流階級の文化を扱うファッション誌「タトラー」のロシア語版から北京語に翻訳され、さらに英語の字幕が付けられています(展示作品は日本語字幕付き)。この多言語のナレーションは、民族のアイデンティティ、上昇志向の文化や過剰な富、そしてそれらが英国の不動産開発に果たす影響の複雑な関係について言及しています。

ザ・チャイニーズ・ルームによる《親愛なるエスター》(2012年) は、ある無人島を歩く人物が、愛、喪失、罪悪と贖いに関する個人的な物語の述懐をはじめる一人称のビデオゲームです。プレーヤーは、亡くなった妻に向けた手紙を読み上げる男の唐突なナレーションと、彼の心理的景観のなかを彷徨います。音楽、文学、または審美的な要素をゲーム空間のなかで統合したこの作品は、止まらない悲しみの発露とその受容プロセスという主観的な目的をもとに展開します。行き場をなくした主体が、デジタル空間をあてもなくさまよい、モノローグを繰り返すことで現実と架空の境界を通過していきます。

ビデオゲームの煩雑なメカニズムを解体し、歩くことと見ることに特化したこれらの「歩くシミュレーター」は、RPGに見られる物語の誘導された物語に対して、プレーヤーをアトピアな領域に放置し、恣意的な物語の構築に委ねています。 デジタル領域における本展の終わりのない漂流は、フィクションと現実の階層と差異が失われる現代のメディアに向けられています。

仮想空間は、現在進行する物語をいかに操作することができるでしょうか?そこに現実的かつ理論的な葛藤を、解決する手がかりはあるのでしょうか?ゲームという媒体の特異性が、私たちの空間的想像力にどのような影響を与えているでしょうか?

『スリードリフト』は、アサクサとフェデリカ・ブッチ(アサクサインターンプログラム2017) によって企画され、HIGURE 17-15 cas とActive Gaming Media によるサポートによって実現しました。
  • PEOPLE

Serafín Álvarez
Lawrence Lek
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