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Mikhail Karikis - Children of Unquiet (2013-2014) video still-2
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厚木たか、ミハイル・カリキス、ヘクトール・サモサ

キュレーション : アサクサ、倉敷科学芸術大学 川上研究室

11 OCT - 01 NOV 2015

アサクサは、厚木たか、ミハイル・カリキス、ヘクトール・サモラによるグループ展「1: 第三の歯車」を開催いたします。ドキュメンテーションやフィールドリサーチの出力方法として映像メディアを取り上げ、移りかわる世代・政治・ジェンダーの通史的な視座を通して、コミュニティーのあり方を考察します。近代を通じて集団形成の核をなしてきた労働活動は、マテリアルな生産から、サービスや情報 を中心とする非物質的な創出へと移りかわってきました。こうした状況を背後に、アートにおける社会的関与の方法も、構築した状況 を通じて未来をリハーサルする思考実験の場へと変容しています。本展では、特定の地理や歴史的地点を参照する3つの映像作品を とりあげ、これからのコミュニティー創出の鍵となる意識——コラボレーション、ボランティア、権力の分散、公的資産と第三セクター、 知識・エネルギー資源の共有——を作品のうちに投影し、変化すべき現状を問い直します。

生涯を通じて反戦運動に参加した厚木たかは、一貫してジェンダーの視点をドキュメンタリー映像に投じてきました。短篇ドキュメン タリーの脚本家として、写真化学研究所(PLC、東宝映画の前進)に勤めた厚木は、終戦の緊張が高まる1945年、藤沢市にある縫製 工場にて女性工員を記録した《わたし達はこんなに働いてゐる》(監督:水木荘也、1945年)を制作します。「わたし達はこんなに働い ているのに、なぜサイパン島では日本軍が玉砕してしまったのだろう。」肩を寄せあう女工たちの新聞報道から着想した本作は、個が 全体性に回収される心理構造の危険と、過度の感情移入が引き起こす心理劇の極点を描いています。情報局の一方的な編集のため、 厚木のイメージは本来の意図からはかけ離れ、押し付けられた虚構の物語との二重拘束のうちに、捉えがたくさまよいます。中心に対して周囲を従属させる管理モデルを過去のものとすることに、現代の出発点があったとすれば、ジェンダーの差異をも統制したこの歴 史的地点に、現在に続くあらゆる問題の萌芽を見いだしうるのではないでしょうか。

メキシコ出身のインスタレーション作家 ヘクトール・サモラによる《Inconstância Material》(“Material Inconstancy” 2012-13 年)は、第13回イスタンブール・ビエンナーレ(2013年)で行われたパフォーマンスの記録映像。36人のレンガ工が大学施設を占拠 し、轟然とした掛け声のなかで一人からまた次の職工へとレンガを投げ交す運動のループが続きます。工事現場の一日を教育の現場 に移した行為の再現は、
建築素材として安価でありふれた土レンガと職工の身体性を介し、商品が終わりなく自転し続ける状況を生 み出します。経済活動に再考をうながし観客を参入させるきっかけを与える本作は、商品の流通と過剰な顧客サービス、そして私的所 有のために引き起こるさまざまな掛け引きに疑問を付します。そこにはアート業界への内省的な記述を含んでいるといえるでしょう。とめどない流通の過程でいったい何が失われ、何が獲得されているのでしょうか。作業の工程に引き起こる人的エラーや、欠損を受け入れる眼差しがなければ、労働を達成する喜びさえ生み出すことができないのかもしれません。

ロンドン在住のアーティスト・パフォーマー ミハイル・カリキスは、参加者の声を媒介として人間の記憶や想像力の可能性を探索しま す。イタリア・トスカーナ州にある世界初の地熱発電所ーかつては5千人の労働者を抱えた村落も、近年のオートメーション化によって廃墟となりました。《Children of Unquiet》(2014年) は 、こうして村から離れた子どもたちを再び集結し、発電所を占拠する映像作品です。子どもたちは過去の記憶を辿り、この土地で耳にした毎日の音ー間欠泉から噴き出すしぶき音、発電所のパイプ管から絶え 間なくなり響く低音ーを発声します。そして、生態にもとづいた経済モデルと愛の生産力に触れたネグリ&ハート著《コモンウェルス》 (2011年)の一節を朗読しています。人工によるエネルギー産業と自然による大地の音響を結びながら、日々の風景をコーラスする参加者は、生まれ育った共同体とグリーンエナジーの始点に立ち返っていきます。

産業の衰退やエネルギー問題が問いただされながらも、集団の声が掻き消されてしまう昨今において、本展は次のような疑問を導き ます。情報化した現代にあってなお、私たちを歴史的、地理的集団性のうちに閉じ込めてしまうとすれば、その要因は何なのでしょうか。コミュニティーという結束が希薄な現代において、最大公約数の社会問題にどのように取り組むことができるでしょうか。

「第三の歯車」は、アサクサと倉敷芸術大学川上研究室との共同キュレーションによって企画されています。
  • PEOPLE

— Taka Atsugi
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